闘牛を撮りに行き始めて数回は、単純に牛の闘っているところを撮るだけで
精一杯でした。続いて少しずつ牛の名前を覚え始め、そこそこ解るようにも
なってきました。そうなると、次に興味を持つのは「牛持ち」の勢力です。
大相撲でいう「部屋」に似たところがあると感じます。牛を力士に置き換え
てみると、興味深い点が見えてくるのです。最大勢力は「柿乃花」ですが、
次に登場の庄八は 、「四天王」である薬師大力と同部屋にあたるんですね。
そう考えると、この取組にはドラマがありました。これも角突きの面白さ。
第九回:山王(十三歳/神戸)-庄八(六歳/中野)
話は
昨年の千秋楽に遡ります。山古志を代表する闘牛になった薬師大力は、
ここで山王と対戦しました。結果は引き分けですが、一気に押し込まれて、
柵にぶつけられるという展開。さほどダメージはなかったようですが、見た
お客さんは山王有利と感じた人も多かったでしょう。そこで、庄八ですよ。
同部屋である薬師大力のお返しができるか、その点も見どころの一つです。
さて、まずは庄八の入場です。のっそり入ってきました。
歩みはゆっくりでしたが、前足で土を掻き上げるのはけっこう高速です。
そして体勢を低くして歩き、角を地面に擦るように首を振ります。
続いて山王が入りました。こちらもややゆっくり歩き、土を蹴り上げる。
顔に斑の入っている牛が庄八、赤牛は山王です。
山王が唸ってます。そのまま中央に進み、頭を合わせました。
年齢で言えば、庄八が倍以上離れた山王の胸を借りることになります。
おお、角のぶつかる音が大きい。
まずは庄八が、右から左から角を振って仕掛けます。
これに応じていた山王。しかし、ふと間が空いて庄八が少し下がったら、
パッと左に移りました。お?と思ったその瞬間、庄八が押し込みます。
これで双方が場内をほぼ一周走り回り、その間庄八は角を当てていました。
土手のところを走り抜けた際には土が飛び散り、客席にも飛んで行くほど。
しかし、柵にはぶつかりませんでした。よく回り込んでいたと思います。
年齢を考えると、この俊敏な動きはすごいです。しかも速かった。
場内はこれで一気に盛り上がりました。
近くに座っていた人も「う〜おぉぉぉぉ〜」と声を上げています。
解説によると、相手が若い牛ということで、山王が少し舐めたようです。
そうしたら、庄八が追ってきました。
しかし見事なのは、また中央に戻って頭を合わせたことです。
押されて終わるわけではなく、その後も向き合い再び角突きを始めました。
しかし、すぐに頭が離れます。
庄八は首を上下に振ってやる気を見せているようですが、山王はどうにも
その気にならない様子。再び双方首を低くして構えますが、合いません。
庄八は再び首を縦に振っています。そして、左に変化する山王。
これで勢子が鼻を取り、両牛を分けました。
解説によると、山王は気難しい牛。
気分が乗ると凄い力を発揮しますが、逆だと頭を離してしまうことがある。
以前、悔しいことがあった次の山王はとんでもない、という話を書いたので、
凄いときの山王を何度か見ています。薬師大力戦がそうだったのでしょう。
拍手が送られる中、山王は引き上げ。庄八は一周回りました。
「ばいばーい」という声が客席から。お子さんと一緒に見ているのかな。
という結果でした。
これを見ていると、牛同士で打ち合わせしてるの?と思ってしまいます。
勝負は引き分けですが、庄八は山王を押し込みました。お返しは成功ですね。
ただ、付け加えておくと、庄八は前回、
山仁との対戦で押し込まれています。
これの悔しさを忘れていなかった、と考えることもできます。
牛ってすごい。
※記事作成にあたり 、MC勢子・松田さんの解説を参考にしています。
↑左が庄八。これは山王を追いかけた後のシーン。落ち着いていました。
↑開始直後は右にいた庄八が、先制攻撃を仕掛けるところ。受ける山王。 ↑お互い何か考えてます。頭を離して距離を取り、様子を見ている感じ。↑ふらりと歩き出す山王を眺める庄八。「お、おーい。どこ行くのさ。」↑そうすると、まぁこうなりますね。山王を追いかける、庄八の姿です。 ↑走りながらの庄八の攻撃。これはたまらん。山王も必死に走りました。↑ぐるっと回って、再び向き合う両牛。山王も気合の入った表情ですね。 ↑真正面からぶつかり、ちょっとビックリの庄八。山王の角、でっかい。↑山王の角が庄八の耳元に。山王もようやくエンジンが掛かってきたか?↑庄八の表情がカッコいい!冷静に相手を分析しているかのようでした。 ↑ちょっと離れて、再び考え中?角を合わせて、様子を伺っていました。