出番がかなり遅くなってきました。去年の千秋楽は取組が始まる前。
ゆっくりと、でも確実に。かつての動きと気持ちを取り戻しました。
一年かかりましたが、元の位置に近付いてきたのです。さぁ武雄力。
今場所から名前が「山徳号」に変わりました。新しいスタートです。
第十三回:柿乃花黒ダイヤ(八歳/岩手)-山徳号(十歳/竹沢)
残りの取組は四番になりました。
この場所最初の記事で書いた、松田さんが名付ける「四天王」の登場です。
それは柿乃花黒ダイヤ、新宅、龍皇、薬師大力。
いずれも若い牛ですが、最も勢いがあり、角突きを盛り上げてくれます。
そしてこの牛たちに、ベテランがちゃんと立ちはだかるのです。
だからこそ、素晴らしい取組が生まれます。要注目の終盤戦です。
先に山徳号(武雄力)が入ってきました。まずは場内を見据えます。
そして土の感触を確かめるように鼻を近付け、前足で蹴り上げました。
冷静な印象です。そして、角で土を掘る仕草を見せました。
その様子は、後からやってきた柿乃花黒ダイヤも認識していたはず。
首を斜めに構えて入ってきて、角をつるはしのように使いました。
土を掘る掘る掘る、まるで畑を耕しているみたいです。
「あそこに種を植えたくなりましたね」佐野さんがナイスコメント。
いよいよ頭を合わせますが、そわそわしているのは柿乃花黒ダイヤです。
早くやりたい、そんな雰囲気を体から漂わせています。
そしていよいよ取組開始。やや静かなスタートになりました。
勢子の声。角がぶつかる音。
まずは山徳号が仕掛けようというところ、柿乃花黒ダイヤが切り返します。
そして左角で掛けて出ようとしました。
黒ダイヤは足の使い方が上手いです。ステップを踏むかのような動き。
山徳号が上から詰めようとしました。これを前足を折り曲げながらも、
首の力だけで跳ね上げた黒ダイヤ。勢子の手拍子の音も聞こえます。
山徳号、飛び込む。しかし上手く体を躱して正面に受け止めた黒ダイヤ。
じわじわと押していくのは山徳号。
しかし、うまく回り込んで体を柔らかく使う黒ダイヤ。
場内が盛り上がってきました。
小さな女の子でしょうか、興奮気味に何やら叫んでます。「いけーっ ! 」
激しい攻防が繰り広げられるなか、勢子が飛び込みました。
女の子の声がよく通り、ハッキリと聞こえてきます。元気いっぱい。
さぁ、勢子と牛の闘いが始まりました。
激しい展開、勢子が走ります。「ほらこい!」「さぁこい ! 」声が飛ぶ。
両牛は闘いをやめません。
しかし勢子はスッと鼻を取り、見事に両牛を分けました。大きな拍手。
牛は、「勢子が動き出したら綱を足に掛けられる」これを解っています。
ということは、相手の牛にも綱がかかる。即ち、相手の動きが悪くなる。
だからここが勝負どころ。そう判断して動きました。
しかし勢子は、「絶対引き分けにするんだ」という意地で引き分ける。
人間も牛に負けない意地を持っている、これをたっぶり見せてくれました。
いい闘いを見せてくれた両牛に、大きな拍手が送られました。
山徳号、黒ダイヤの順に引き上げです。
名前を変えて心機一転、武雄力の新しい道が開きました。
去年からの流れを見てきて、これぞ完全復活といえるでしょう。
相手は黒ダイヤです。よくここまで互角に渡り合ったと思います。
初めて武雄力を見た時のような、あの力強さが戻ってきました。
すべての場所が終わって、もしも「輝く!山古志闘牛大賞」なんていう
表彰イベントがあったら、文句なしの「カムバック賞」だと思います。
※参考:勢子・松田さん(実況&解説) 、FMながおか・佐野さん(進行) 。
↑左が山徳号(武雄力)。よく頑張りました。完全復活といえるでしょう。
↑開始直後から、両牛とも積極的に角を使います。目元も真剣です。↑
山徳号は押さえつけるような攻撃。柿乃花黒ダイヤは足を折ります。 ↑試合巧者の黒ダイヤ。さりげなく山徳号の耳元に角を入れています。 ↑
目が赤くなった黒ダイヤ。刀のような角の先が、山徳号に向きます。↑
こうなるとさすがに脅威を感じるのか、山徳号の表情も変わります。↑
低い位置から黒ダイヤを攻める山徳号。足を折っての攻撃、お見事。
↑
しかし黒ダイヤはこれを、立ち上がって回避しました。表情も強い。
↑
ならばと山徳号、再度の攻撃を見せます。休まず速く攻め続けます。↑位置が変わって、左が黒ダイヤ。右角をラリアート気味にお見舞い。 ↑やられたらすぐにやり返す山徳号。上の1秒後にはこうなりました。
↑
黒ダイヤの意地。山徳号を押さえつけるような攻撃を見せたのです。↑
にゅうっと伸びる黒ダイヤの角。先の尖りが鋭く、当たったら痛そう。↑
山徳号、上から一発。黒ダイヤのこの体勢、どっかで見たような。。。
↑
勢子が足を取ってからも、角を絡めて戦いを止めなかった両牛です。
(1D X /EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM)