8/15 山古志闘牛 新宅赤パンダ-充号 前編

第五回:新宅赤パンダ(六歳/梶金)-充号(五歳/池谷)

先に入ってきたのは充号。堂々と、ゆっくりした足取りです。
まだ五歳ですが、数年後には最も大きな牛になるかもしれません。
そして、後から新宅赤パンダ。成長著しい推し牛です。
ゲートを通るなり角で土を掘り、前足で跳ね飛ばし、小さく唸る。
調子が良さそうです。そして、どことなくオーラが感じ取れます。

「最初から目が離せません、激しい対戦を予想しています。」
解説の松田さんからも、そのようなアナウンスがありました。
綱が放たれ、いよいよ取組開始。いきなり客席がどよめきました。
まずは新宅赤パンダが一発。勢子の声もあちこちから飛び交います。
充号は今日、とても用心しています。
いつもパッと頭を合わせに行く牛が、相手の出方を伺っています。
そのくらい、新宅赤パンダの出す雰囲気が「気を抜けないぞ」と、
充号に感じさせているのです。(赤パンダは何を思っていたのだろう)
先に充号が仕掛けるも、新宅赤パンダがそれを切り返しました。
下から跳ね上げて、前に出ようと試みます。
時折、ぶつかり音が聞こえ、力と力の入った拮抗状態が続きます。
ちょっとでも隙があったら入られる、それを牛同士が解っています。
なので、とても慎重に仕掛けているのです。
充号、頭を振ります。左から一発二発三発と切り返します。
赤パンダは頭を下げて、振った角が外れた瞬間に飛び込もうと狙う。

そして一瞬のこと。
充号の首横に入った新宅赤パンダ、一気に押し込みました。
FMながおかの佐野さん、「おおーっとすごい ! 」
勢子の誰かでしょうか、「とめろとめろ ! 」という声も聞こえます。
とてつもない速さです。(あとから動画で何度見ても、目が追えません。)
押し込んでいる間も、新宅赤パンダの角が充号の体を捉えていました。
ここでもう、充号が左前足を痛めてしまったのが明らかな状況でした。
これを察したか、新宅赤パンダは動きをやめました。
しかし、充号がなんと戻ってきたのです。足を痛めているのに。
再度新宅赤パンダに向かって行く素振りを見せ、赤パンダも応じました。
とはいえこれはあまりにも無理があり、再度押されてしまいます。
赤パンダは深追いせず、すぐに直立不動の体勢になりました。
まず新宅赤パンダが鼻を取られ、充号はゲート付近で待機します。
場内は騒然となりました。最初のアナウンス通り、激しい闘いに。
でも、このような展開になるとは予想していませんでした。
解説によれば、充号は押されている間も返そうとしていたそうです。

充号は、左前足を上げて佇んでいます。
そのままトラックに載せ、牛舎に戻って治療を受けることになりました。
それにしても驚いたのは、充号の意地です。
おそらく、下に置くことができないほど痛むのだと思いますが、
それでも踏ん張り、新宅赤パンダに立ち向かっていきました。
すごい。充号には暖かい拍手がたくさん送られました。
時間はかかるかもしれませんが、なんとか復活してほしいと思います。

ここまでが、当日の出来事です。
しかし新宅赤パンダから見れば、これは一年越しのリベンジであった、
赤パンダにとっても意地の闘いだった、そう思うところがありました。
(後編に続く)

※動画は山古志闘牛会のYouTubeチャンネルで。登録もお願いします。
※記事作成にあたり、MC勢子・松田さんの解説を参考にしています。
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↑左が充号、右は新宅赤パンダ。このように向き合うシーンはかなり少なめでした。
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↑ファーストカット。新宅赤パンダの挨拶代わりの一発。充号の表情に注目です。
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↑いったん離れます。というか、充号がインターバルを取ったように感じました。
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↑新宅赤パンダ、積極果敢に攻撃します。序盤は角の攻防になりました。
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↑充号、いつもと違う何かを感じたのかもしれません。でも正面から向き合います。
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↑充号に正面から刃(角)をピタリと向ける新宅赤パンダ。目線もすごく強いです。
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↑充号の目元付近に角を合わせる赤パンダ。目元を狙っているように感じました。
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↑充号の攻撃。しかし、赤パンダの表情は怖いくらいに冷静でした。
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↑少し引いてみると、充号の大きさが解ります。まだ五歳なんですよ。
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↑前に出ようとする赤パンダ。ここでもポーカーフェイスです。気を緩めない感じ。
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↑その三秒あと。無表情のまま、充号のことを見据えています。何を想う。
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↑赤パンダの左角は充号の目元を狙います。冷静に戦況を見つめているようにも。
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↑充号は上から。それに反して赤パンダはあくまでも表情を変えません。
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↑そして再び充号の目元を狙う赤パンダ。これは厳しい攻撃だと思います。
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↑ぶつかると砂埃が舞います。ここでも赤パンダは落ち着き、冷静な様子です。
(1D X /EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM)
by keiji_takayama | 2020-08-28 21:30 | 山古志闘牛場 | Comments(0)

いつもは中古カメラ店でカメラやレンズを売ってます。休日になると、望遠レンズを担いで各地の動物園や闘牛場で撮影活動。動物たちの表情を追い続け20年が経過しました。旅行会社で撮影ツアー講師を務めています。


by keiji_takayama
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