とにかく距離が近い、というのがその理由だ。開放感で言うなら
上野動物園とか千葉市動物公園に敵わないが、直線距離で間近に
ワオキツネザルが見られるというのは、そうそう経験できない。
来園者の多くがここで立ち止まって、顔を近づけるのも頷ける。
しかし、檻はなかなか手強いのである。目が細かいことに加え、
縦横に張り巡らされている。クロススクリーンフィルターを装着
してそのまま撮るとソフトになるのだが、まさにそんな感じだ。
それなりに距離を置くこともできるので、撮影するのはそんなに
難しくはない。むしろ、集まってしまうほうが悩みの種だった。
単独で座ってくれるタイミングを、時間をずらして待ってみる。
子どもたちが多いので、それなりに気も使う。大声を出されると
それまでの状況が一変することがある。忍耐力が必要であった。
ようやくチャンスが訪れたのは、5回目に立ち寄った時だった。
それが、ワオキツネザルを撮影したラスト。しかもこのカット、
その最後に撮影したものである。なんとも絶妙な表情を見せた。
まさかそんなつもりはないと思うが、苦戦ぶりをからかうように
取ってしまいそうだ。あっかんべ〜をしているようにも感じる。
「檻が抜けている」という観点なら、もっとクリアーなカットも
あるのだが、表情の面白さがあって、こちらを選ぶことにした。
にしても、苦戦したものである。こうして見てみると、ソフトな
雰囲気もいい。茶目っ気たっぷりな性格も、垣間見えるようだ。
またそのうち、ゆっくり撮ってみたくなる。羽村はそういう所。
(OM-D E-M1/シグマAPO 120-300mm F2.8 EX HSM )