濡れながらそこにじっと立ち、睨み付けるようにファインダーを覗く。
他の来園者からは確実に変な人だと思われるだろうが、気にしない。
好みだし、ここのブログにも雨の日のトラ写真は多数掲載している。
ところが、今回は思っていた展開とは程遠いものだった。
広いほうの運動場にトラはいたけど、茂みに隠れているような感じ。
いや、しっかり姿は見えているのだが。たぶん隠れているんだろう、
と思えるような位置の選択、座りかただった。さすがにこれだと
ポートレートは似合わない。そして、手持ちの200mmだと遠い。
メインとしてはタクマーを使っていたが、もう1本背負っていた。
キヤノンNewFD150-600mmF5.6Lだ。この焦点距離をもつレンズは
今ならシグマ、タムロンからいくつか発売されている。しかしこれ、
昭和のレンズだ。発売は1982年。通しでF5.6というのは見事である。
とはいえ、発売からかなりの年月が経過した。レンズの中には、肉眼で
わかるレベルの大きなクモリが発生している。晴天時には使えない。
そんなわけで、雨の日に使うのがこのレンズにとっては好都合だった。
いわばワンポイントリリーフのような感じだが、これをセットした。
しかし、広い運動場ではやっぱり絵にならなかった。茂みの草が入る。
これでもうすっぱり諦めた。次はその隣の運動場にいる「シズカ」だ。
こちらのほうは、まるで修行でもしているかのようだった。雨に打たれ
じっとしている。檻の目が厳しくて撮影には不向きだと思っているが、
雨なら反射もなく、それなりの形になる。濡れてピ〜ンと伸びている、
目の上の毛にインパクトを感じた。ひたすら雨に耐えている、そうした
イメージが湧いてきた。ボカした檻の柵と重なっているところの描写は
やや厳しいところもあるが、条件を考えれば致し方ないところである。
出番はたった1度。しかし、持っていたからこれを撮ることができた。
(OM-D E-M1/NewFD 150-600mm F5.6L)