結果的にはほとんど動かないのだが、それでも大いに人気者なのだ。
檻の近くにはたくさんのお客さんがやってきて、触ってしまおうかと
いう感じに身を乗り出して眺めている。それもそのはず、カピバラは
檻の近くでどーんと横たわっていたり、座ったりしているのだった。
フェネックの場合、檻と柵の間にそこそこ距離がある。手を伸ばして
どうこうという気にはなれないだろう。ある意味では、絶妙の距離が
保たれている。スマホで撮ろうと乗り出している若い人もいるけど、
そうそう長いこと続けられる体勢ではない。ベンガルヤマネコでは、
そもそも近寄るという発想自体が生まれない。檻柵の目が厳しいので
諦めるケースが多いように感じる。しかしカピバラは、檻柵の距離も
それなりにあるのに、まさに目の前で寝ているように見える。これが
親しみを与えてくれるのだろう。笑顔で見ている来園者が目立った。
井の頭にやってきて、最初にカメラを向けたのがこのシーンだった。
逆側から狙ったのだが、当然のごとく柵が写り込む。3カットだけで
切り上げた。もう1頭はなかなか落ち着ける場所がなかったらしく、
運動場のあちこちで座っていた。何度か足を運んだのだが、その都度
位置が変わっていたように思う。これを撮影したのは11時20分だ。
撮りやすそうな場所にいる。そう感じてレンズを向けた。陽を浴びて
とても眠そうだった。寝顔にも表情がある。瞼を閉じる際の目尻が、
ときおり変わっていた。目尻が下がったような気がするとき、何とも
いえない「ふにゃ〜っ」とした印象になる。これを狙うことにした。
といっても、普通時と比べないとなかなか解りにくいかもしれない。
画面から顔がはみ出てしまうほど近かったので、背景処理にさほどの
苦労はない。耳と口元が切れないように、それだけをひたすら考えて
構図を安定させることに集中した。風は強かったが、楽しく撮れた。
(OM-D E-M1/NewFD 300mm F2.8L)