たぶんそれは今回も変わらないだろう。だから通過しようとした。
ところが、である。
あれっと思ったら、なんとオランウータンがこちらを向いていた。
お客さんの姿が見えず、不思議な気持ちだったのだろうか。
目が合った瞬間、時間が止まったようであった。
でも、ここでオーバーアクションをしてはいけない。
とにかくそのことだけを考え、そっとカメラをセットする。
そっぽを向かれないうちに、静かに急いで撮影しよう。
すると・・・。「なによ、こんな日によくきたわね」
マツコ・デラックス風に、そんなことを言われているような気がした。
すると。
ポートレートのモデルがシャッター音と連携しながら表情を作るように、
目線の向きがくるくると変わるようになった。ちょっとドヤ顔みたいだ。
杉良太郎の流し目のようでもあり、モナリザの微笑みのようでもある。
顔の位置は変わらないのに、視線だけで表情を見せてくれているのか、
そう錯覚するほどであった。時間にして3分、16コマの出来事である。
そして、あらかた撮れたことを確認するかのように、こちらが一息つくと
スラスラとその場を後にしたのであった。スタスタではない。あくまでも、
スムーズかつスラスラな雰囲気なのだ。不思議な、でも楽しい時間だった。
というわけで、こんなカット。流し目をしているモナリザのようである。
AB (30D/EF600mmf4L)