イケタイガー死す

今年も残り2か月になった。動物園では毎年、赤ちゃん誕生のニュースが報道され、
お客さんの来園に繋がっている。だが一方では、消えゆく命が多いのも事実である。
このブログでは、これまで訃報をあまり取り上げてこなかった。固定の動物ファンが
運営しているHPなどでは、かなり大きく詳しく知らせてくれる 。これとは対照的な
スタンスを貫いてきたのにはそれなりに理由もあるのだが、今回だけは、話が別だ。

静岡・日本平動物園を「トラの聖地」であると公言してきた。ここは撮影条件が最も
整っており、トラの代表作の多くをここで撮影している。加えて、それが実現できた
最大の理由が、トシの存在だった。圧倒的にカッコ良く堂々としている。射るような
視線はとても絵になった。ファインダーを覗きつつ、戦いを挑んでいるような気分に
させてくれる相手だったのだ。初めてその姿を捉えた日から、年に数回は行くように
なって、歩いているところを定点で撮るのが毎年のテーマの1つになったのである。

ところが、数年前から日本平動物園の改修工事が始まった。トシは別の場所に移動し
会いに行けなくなってしまう。これで定点撮影は終わった。長く待ち望んだ今年には
ようやく新しい獣舎が完成し、戻ってきたのだが。今度は施設自体が大きく変わって
しまったため、撮りに行く気力がなくなった。断片的に話を聞いたり、ネットなどの
情報を総合して判断したのだが、もうかつてのような写真は撮れないだろう、という
残念な気持ちがあった。しかし、距離が近くなれば見やすくなるのは間違いないし、
お客さんにとっては間近で猛獣を撮影できるいい機会になる。そう思ったので、次の
撮影会の候補地として提案、それがようやく来年実現することになった。そうなると
下見に行く必要がある。それで予定を組んでいた。そこに届いたのが、なんと訃報。
トシが亡くなった。どうやら、ケガが理由らしい。思い入れが一番強いトラなので、
これはとても残念だ。こういうことが起きると、いつも後悔しか生まれない・・・。

そして話はこれだけで終わらない。トシの子供も亡くなっていた。日本平で生まれ、
長野県・茶臼山動物園に移動していた♂の「スルガ」である。子供の頃はよく遊び、
それをカメラでよく追ったものだ。こちらは突然死に近い状態だったらしいが、まだ
6歳である。もう5年前の話だが、このスルガを撮影した写真が、動物園主催の写真
コンテストで銀賞を獲得したことがある。トラ年にこんなことが起きるとは皮肉だ。

写真は2008年5月のトシ。これが最後になるとは 、この時は全く思わなかった 。
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(1D MarkⅡN/EF600mmf4L)
by keiji_takayama | 2010-10-16 01:52 | 日本平動物園

いつもは中古カメラ店でカメラやレンズを売ってます。休日になると、望遠レンズを担いで各地の動物園や闘牛場で撮影活動。動物たちの表情を追い続け16年が経過しました。旅行会社で撮影ツアー講師を務めています。


by keiji_takayama